研究紹介

カーボンナノチューブ(carbon nanotube, CNT)は炭素原子の六方格子からなる円筒構造の物質です.特に原子1層からなるものを単層CNTと呼びます.単層CNTは直径1 nm程度のナノサイズの物質であり,極めて高い電気伝導性・熱伝導性・機械的強度を持つことが知られています.本研究室では,単層CNTを中心とするナノカーボン物質の合成・分析・応用について研究しています.ナノカーボン物質は機械工学・材料工学・物理・化学など様々な分野を横断する学際的な研究領域で,世界中の研究者が日々新たな発見を追い求めています.



単層カーボンナノチューブの合成制御

単層CNTの代表的な合成方法として化学気相成長法(chemical vapor deposition, CVD法)が知られています.900 ℃程度の高温に加熱した金属微粒子に対して炭素を含む分子を供給することで,金属微粒子を成長核として単層CNTが成長します.本研究室は,アルコールを炭素源とすることで高品質な単層CNTが簡易に合成できることを発見し,垂直配向単層CNTの合成を実現してきました.また,単層CNTの電気伝導特性は幾何構造(カイラリティ)により決定されるため,電子・光デバイスへの応用に向けて単層CNTの構造制御合成を目指しています.

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単層カーボンナノチューブを用いた太陽電池

単層CNTは光透過性と電気伝導性に優れていることから,太陽電池への応用が考えられています.本研究室では構造制御した単層CNTフィルムを用い,CNT-Siヘテロジャンクション型太陽電池の作製を報告しています.また,色素増感型太陽電池やペロブスカイト型太陽電池に単層CNTフィルムを適用する研究を行っています.

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単層カーボンナノチューブを用いたトランジスタ

半導体的な性質を持つ単層CNTは電界効果トランジスタに応用することができます.単層CNTを利用することで,透明でフレキシブルなデバイスの実現が期待されています.本研究室では薄いポリマーフィルム上にCNTトランジスタを作製し,まるめたり曲げたりした後も正常に動作することを報告しています.また,単層CNTは次世代の高性能集積回路の材料としても期待されていますが,金属CNTの混在が問題となっています.私たちは合成物中に含まれる金属CNTを選択的に除去する方法を研究しています.

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単層カーボンナノチューブの成長機構の解析

原子レベルでの単層CNT成長メカニズムを解明するために,古典分子動力学法(molecular dynamics, MD法)によるシミュレーションを行っています.原子間の相互作用を表現するポテンシャル関数を用い,ニュートンの運動方程式に従った金属原子と炭素原子の挙動を分析します.触媒上に炭素原子のキャップ構造が形成され,単層CNTとして成長する様子が観察されています.

また,単層CNT成長に用いられる金属微粒子触媒と炭素源分子の化学反応の初期過程を理解するために,Fourier transform - ion cyclotron resonance (FT-ICR)質量分析装置を用いた実験を行っています.この装置は超伝導電磁石,超高真空チャンバー,パルスレーザーなどから成る大掛かりな装置で,陽子1個分の精度でクラスターの質量を判別できます.

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単層カーボンナノチューブの伝熱特性

単層CNTは非常に高い熱伝導率を持つことが知られています.本研究室ではMDシミュレーションにより単層CNTの熱物性を分析しています.また,単層CNTフィルムの熱伝導率を測定する実験や,熱交換器等への応用に向けて単層CNTを混ぜた高熱伝導率の液体を作製する実験などを行っています.

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単層カーボンナノチューブの分光分析

単層CNTはナノサイズかつ擬一次元的な構造を持つことから,通常のバルク物質とは異なる光物性を持ち,物理的に興味深い研究対象です.同時に,分析ツールとしての確立や,光デバイスへの応用のためにも,単層CNTの分光法の研究が求められています.本研究室では,蛍光分光法,光吸収分光法,ラマン散乱分光法,レイリー散乱分光法などを用いて単層CNTの光物性を研究しています.

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グラフェンの合成と応用

グラフェンは炭素原子1層からなる二次元物質で,その発見者が2010年にノーベル賞を受賞するなど,近年非常に注目されています.セロハンテープでグラファイトを剥離することで数μm程度のグラフェンのかけらを得ることができますが,工業的な応用のためにはより大面積にグラフェンを作製する必要があります.私たちは,アルコールを原料としたCVD法を用いて,5 mm以上の単結晶単層グラフェンの合成や,AB積層構造の2層グラフェンの選択合成を行っています.また,グラフェンを太陽電池などへ応用する研究を進めています.

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