三井物産、単層カーボンナノチューブ、高純度の量産技術、次世代高速素子に
2003/02/26 日本経済新聞 朝刊 P.13 721字


 三井物産は二十五日、次世代の超高速コンピューター素子として有望視されるナノテクノロジー(超微細技術)材料「単層カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)」の新しい量産技術を開発したと発表した。従来法に比べ不純物含有量が十分の一。四月にもサンプル出荷を開始。二―三年後を目標に実用化のメドを付ける方針だ。
 同社の一〇〇%出資子会社でナノカーボン材料の研究開発をするCNRI(東京・中央)と丸山茂夫東京大学助教授が共同開発した。
 単層カーボンナノチューブは、微細な筒を構成する炭素原子層が多層ではなく一層なのが特徴。筒を輪切りにした際の炭素原子の並び方によって電気を通す導体や、シリコンのような半導体に変化する特性を持つ。直径数ナノ(ナノは十億分の一)メートルという微細な大きさを利用して、半導体の基本素子となるトランジスタを作製することが可能になる。
 ガス化したアルコールと触媒微粒子を反応させて作る。アセチレンガスや一酸化炭素などから作る従来手法より、すすや多層のカーボンナノチューブなど不純物ができにくいという。
 現在、単層カーボンナノチューブは米ナノテクベンチャーなどが少量生産し、一グラム四万―五万円で販売している。三井物産などでは二―三年後をメドに現在の十分の一以下の値段で、年間トン単位で供給できる体制を整え、実用化研究に弾みをつける考えだ。
 単層カーボンナノチューブの実用化研究では、米IBMや富士通、富士ゼロックスなども力を入れている。直径数ナノメートルサイズのナノチューブをトランジスタに利用することで、既存の半導体と比較しても処理速度が数百倍、同容量のメモリーだと大きさが数百分の一のチップが二〇一〇年にも登場する見通しという。