カーボンナノチューブ アルコールから製造
東大助教授ら基礎技術
2002.07.29 日本経済新聞 朝刊 15頁


東京大学の丸山茂夫助教授らはナノテクノロジ(超微細技術)素材の炭素系筒状分子「カーボンナノチューブ」をアルコールから作る基盤技術を開発した.原料費が安く,製造で不純物がほとんどでないので,手間のかかる精製工程が不要.安価なナノチューブの大量供給に弾みがつく.作ったのは,チューブの炭素原子層が一層だけの単層型。結晶性が非常によくダイヤモンド並みの強度がある。電気的特性にも優れ、次世代の超微小トランジスタ素子や次世代表示装置の素子などへの応用が期待されている。レーザー照射で炭素原料を蒸発させて、ナノチューブを作る手法があるが、安価な量産は難しかった。セラミックスの微細な穴に触媒金属を埋め込み、高温の電気炉の中でアルコールを気化させたものと反応させてナノチューブを成長させる。エタノールを用いて、セ氏800度で反応させたところ、直径1ナノ(ナノは十億分の1)メートルの単層ナノチューブが多数束ねられた形でできた。メタノールだと、反応温度を下げられそうで、その分エネルギー消費を減らせる。いずれの実験でも非晶質のカーボンや多層型ナノチューブは、ほとんど生成されなかった。アルコールを構成する水酸基が不純物を取り除く働きをしているらしいという。