東大、ナノチューブ、製造時間100分の1に――触媒の最適量、簡単算出

2006/ 03/ 06日経産業新聞p.10 733字

 東京大学はカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)製造に必要な触媒の量を簡単に割り出せる新手法を開発した。二種類の触媒金属を傾斜状に積層した特殊な基板を使う。触媒の最適な量を知るにはこれまで実験で試行錯誤してきたが、こうした手間が省けナノチューブの製造時間を百分の一に短縮でき、低コスト化につながるという。  丸山茂夫教授と野田優助手らの研究グループの成果。  二センチメートル角、厚さ〇・五ミリメートルのシリコン基板の上に、一方の端に幅二ミリメートルのすき間のあいた金属板を約四ミリメートルの間隔をあけてかぶせる。金属板の上から触媒の一つモリブデンに電圧をかけ原子を飛び散らす。すき間から原子が入り込み傾斜状の厚みができる。  次に、金属板を九十度回転し、モリブデンと同じ要領でもう一つの触媒であるコバルトの傾斜層を作る。  基板の位置ごとのモリブデンとコバルトの積層量は、コンピューターシミュレーションと実験であらかじめ把握可能。積層量は電圧と時間によって変えることができる。  カーボンナノチューブ製造装置のなかにできた基板を入れ、セ氏八百度に加熱。その後エタノールガスを流すと、ガスが金属触媒と反応して基板上にナノチューブができる。どの場所にナノチューブが一番できたかどうかを調べれば、最適な触媒の割合を知ることができる。  これまで触媒条件を調べるには、いちいち金属量を変えた基板を使ってナノチューブを合成する実験を繰り返していた。今回開発した手法の基板だと一回の実験ですむ。  ナノテクノロジー(超微細技術)素材を代表するカーボンナノチューブは、電気伝導性に優れるなど特性があり、半導体素子などへの応用が期待されている。  ただ、現在の技術では安価で量産することが難しい。