光学素子、ナノチューブで試作――東大、微細加工応用に道。

2005/ 05/ 23日経産業新聞p.13 500字

  東京大学工学系研究科の丸山茂夫教授の研究チームは、カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)でつくった薄膜を使い、特定の光だけ取り出せる光学素子を試作した。半導体の微細加工などに応用できる可能性があるという。今後、企業と組んで実用化に必要な応用研究を進める考えだ。  試作した素子は「偏光素子」と呼ぶ。偏光は振動面がそろった光。様々な偏光が混じった光を素子に照射すると、特定の偏光だけ取り出せる。  筒の壁が単層タイプのナノチューブを基板に垂直に立てて製造、これをびっしりブラシのように並べて薄膜にした。膜の厚さはチューブの高さの二―三マイクロ(マイクロは百万分の一)メートルとなる。チューブの直径は約二ナノ(ナノは十億分の一)メートル。薄膜にレーザー光を当てながら素子の角度を変えると、特定の偏光を透過したり遮断したりできる。可視光でも紫外光でも利用可能という。  従来の偏光素子は石英や高分子などが使われている。ナノチューブを使う新素子は耐久性がより高いと研究チームはみている。まだ基礎研究段階なので具体的な用途開拓は今後の課題だが、レーザーを使うリソグラフィー(露光)など半導体製造工程への応用を目指す。