東大、単層ナノチューブ製造、装置の費用、10分の1以下に
――触媒だけを加熱
大幅に小型化も
2004/ 02/ 10日経産業新聞p.9 646字


東京大学の丸山茂夫助教授らは、カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)の中でも光素子や薄型表示装置の材料として有望な単層タイプを安価に製造する新手法を開発した。単層ナノチューブを製造する際、装置全体を加熱していたが、新手法は触媒だけを熱する仕組みで、装置を大幅に小型化できる。装置のコストは十分の一以下で済むという。 新手法は(1)ナノ(ナノは十億分の一)メートルレベルの穴を持つ多孔質材料、ゼオライトの中に触媒を入れる(2)電気を流して基板をセ氏八百度に加熱する(3)原料のガス化したアルコールを加える――の手順で製造する。触媒部分に単層ナノチューブができた。電子顕微鏡で観察すると、すすなどほとんど不純物はなく、高純度の単層ナノチューブができた。 従来は装置全体を加熱する必要があり、耐熱性を持たせるために装置が大型で高価だった。東大の新手法は基板だけを加熱するので、装置のコストは十分の一以下になるという。丸山助教授は「市販の部品を組み合わせ、十数万円で試作できた」と話している。構造も単純で基板を大面積にでき、単層ナノチューブの大量生産も可能。 光など特定の触媒だけを加熱できれば、単層ナノチューブを狙った場所に作ることも可能になる。大規模集積回路(LSI)の回路などを単層ナノチューブで作る場合の基礎技術としても注目される。 単層ナノチューブは超高速光スイッチや微細配線、薄型表示装置「電界放出型ディスプレー(FED)」の中核部品などへの応用を目指し、開発が進んでいる。