東レ・東大、単層型ナノチューブ、純度90%以上に、長寿命FED可能

2003/06/23 日経産業新聞 P.8 507字


 東レと東京大学の丸山茂夫助教授は、純度の高い単層型ナノチューブの作製法を開発した。多孔質の無機材料ゼオライトの穴を使って合成する。耐熱性が高く品質がよいナノチューブが九〇%以上の純度で合成できる。電界放出型ディスプレー(FED)の重要素子の電子放出源などへの応用を目指しサンプル出荷を始めた。二〇〇四年度にも量産化する。
 ゼオライトが持つナノ(ナノは十億分の一)メートルレベルの微細な穴を利用して、単層のナノチューブだけを合成できるよう工夫した。ゼオライトは多孔質材料の中でも特に穴の大きさが均質なため、純度などが高まったという。
 ナノチューブの合成原料に使うアルコールの働きで結晶構造が壊れたナノチューブが減り、高品質の材料の生産が可能になった。従来より百度以上高いセ氏六百度まで耐えるという。
 きれいな結晶構造で耐熱性が高いナノチューブはFED実用化に向けての課題だった寿命の延長につながる。低電圧で駆動するという単層型ナノチューブの特性を残しつつ、長寿命FEDを製品化できる可能性がある。ナノチューブはFEDの重要素子のほか、樹脂の強度や電気伝導性と熱を伝える性質などを大幅に向上する材料として期待される。