単層ナノチューブ、基板に効率よく形成――東大、原料にメタノール
2003/04/28 日経産業新聞 P.6 545字


 東京大学の丸山茂夫助教授らは、単層のカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)をシリコン基板などの表面に効率よく形成する技術を開発した。単層ナノチューブは電圧をかけた際の電子の放出性能が高いため、電界放出型ディスプレー(FED)向けなどの技術として有望視されている。素材メーカーと共同で一年以内の実用化を目指す。
 水晶やシリコンなどの表面に、まず二ナノ(ナノは十億分の一)メートル未満の金属の微細な粒子を付ける。高温で炭素を含む原料ガスのメタノールを吹き付けると、金属粒子を触媒として反応が進み、シリコンなどの表面に単層のナノチューブができる仕組みだ。
 メタンで単層ナノチューブを作る従来の手法だと反応温度がセ氏約八百五十度と高い。このやり方でシリコン表面などにカーボンナノチューブを形成すると、触媒金属がシリコンなどと反応してしまう問題があった。
 メタノールは反応温度が同約六百五十度と低いため、この問題を回避できる。シリコン以外にガラスなどの表面に単層ナノチューブを作ることができた。
 ナノチューブは炭素原子六個が結びついた亀の甲羅のような基本構造が多数つながったシートがチューブを作っている。シートの数の違いで直径約一ナノメートルの単層タイプと直径数十ナノメートルまでの多層タイプがある。