東大、単層カーボンナノチューブ、基板上に垂直合成――LSIや高速光通信向け。

2003/12/30 日経産業新聞 P.6 738字


 東京大学の丸山茂夫・助教授らは、代表的ナノテクノロジー(超微細技術)素材の単層カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を基板の上に垂直に合成する手法を開発した。単層ナノチューブを使った大規模集積回路(LSI)用配線や光センサー、高速光通信素子などにつながる成果。一年以内にサンプル出荷できるよう、企業に技術移転する考えだ。  金属の溶液に水晶基板を浸し引き上げて乾燥すると、基板表面に直径約一・五ナノ(ナノは十億分の一)メートルの金属触媒ができる。ナノチューブの原料となるアルコールを添加する直前に水素を加え、金属触媒を活性化した。  大半の金属触媒からナノチューブが合成されるため、じゅうたんの毛のように互いに支え合って直立した。従来は金属触媒の多くが活性化していなかったので、合成密度が低く、横に寝てしまっていた。  立体的に集積して配線するLSIは、層の間をつなぐ垂直配線に多くの電気が流れる。富士通などは断線の恐れが少ない材料としてナノチューブを研究している。新技術は合成密度が非常に高く大量の電気を流すので、層間配線に有望だ。  単層ナノチューブが光に反応する性質などを調べる試料としても使える。単層ナノチューブの光吸収反応などは、ナノチューブの横から光を当てないと現れない。正確な物性を調べ、安定した性質の素子を作るには単層ナノチューブの向きをそろえる必要がある。  ナノチューブは筒状の層の数によって、単層タイプと多層タイプがある。単層ナノチューブは光を吸収して赤外光を出す働きがある。光と相互作用する性質があるのは、単層ナノチューブだけで、超高速光通信やセンサーなどに向けた研究が進んでいる。

【図・写真】金属触媒の大半から単層ナノチューブが生え、じゅうたんのように直立した