東大、単層CNTを1本ずつ分離するための新界面活性剤を合成

2008.03.04 日刊工業新聞 20頁 (全602字) 

東京大学の丸山茂夫教授、加藤大特任准教授、福島孝典特任准教授、相田卓三教授らのグループは単層カーボンナノチューブ(CNT)のかたまりを1本ずつバラバラにするための新しいタイプの界面活性剤を合成した。従来の界面活性剤と異なり、単層CNTの狙いの太さや筒の部分の特定の巻き方だけにくっつく性質を持たせることが期待できる。この性質を持たせることができれば、単層CNTを使った新型トランジスタ、新種のセンサーなどの開発に役立ちそうだ。
研究成果はオーストリアで開催中の「新材料の電子物性に関する国際会議」で6日発表する。 この界面活性剤は主に炭素原子で構成されるトリフェニレンという分子を骨格にし、骨格から3方向に炭素の直鎖が伸びた構造をしている。それぞれの直鎖の先端にはカルボキシル基という水になじむ親水性の分子が付いている。単層CNTの表面の炭素原子6個で構成される6角形の部分に重なるように、界面活性剤の骨格部分がくっつくと考えられている。 直鎖の長さや骨格部分の形を変えられることから、分子設計によって「SDBS」「SDS」といった従来の界面活性剤にはない性質が期待できる。これまでの実験では、直鎖が長いと太い単層CNTに、短いと細い単層CNTによくくっつき、それぞれをバラバラにする傾向があることを確かめた。 丸山教授は「今後、いろいろな構造の単層CNTを狙いどおりバラバラにできるようにしたい」と話している。
日刊工業新聞社