東大、単層カーボンナノチューブの成長促進法を解明

2008.03.03 日刊工業新聞 25頁 (全772字)

東京大学の丸山茂夫教授、項榮(シャンロン)大学院生らは単層カーボンナノチューブ(CNT)の垂直配向膜(用語参照)をアルコール触媒化学気相成長(CVD)法と呼ぶ手法でつくる際、ガスにアセチレンかエチレンを加えると成長促進効果があることを実験で解明した。加えない場合に比べ、成長速度が一時的に大幅アップ。アセチレンでは10倍、エチレンでは4倍の速度に達することもあるという。3日から名古屋で始まるフラーレン・ナノチューブ総合シンポジウムで発表する。

多様な応用が見込まれる単層CNTの用途に応じたつくり分けにつながる成果。とくにキャパシタ、熱デバイス、燃料電池の電極など、単層CNTの長さが求められる用途で役立ちそうだ。 アルコール触媒CVD法は金属触媒と反応させるガスにエタノールなどのアルコールを使う手法で、ほかのCVD法より低温で済み、高純度の単層CNTが得られる。 実験では金属触媒にコバルトとモリブデン、ガスにエタノールを用い、基板から垂直配向に単層CNTを成長させた。また単層CNTの成長と同じ方向に可視光のレーザー透過させ、時々刻々と変わる膜厚を計測した。 まずエタノールだけで単層CNTを成長させ、長さが5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)になったところで体積比でエタノールの1%分のアセチレンを加えたところ、20秒間で長さが20マイクロメートルまで成長した。 一方、単層CNTの長さ2マイクロメートルのところで25%分のエチレンを加えると、長さは50秒間で15マイクロメートルにまで伸びた。 このような急成長が起こるのは、アセチレン分子やエチレン分子の1分子あたりの水素原子の数がエタノール原子より少なく、触媒とより反応しやすいためと考えられる。丸山教授は「ただし、触媒との反応の持続時間が短くなるという欠点もある」と指摘している。
日刊工業新聞社