アイスナノチューブの室温作製、五角形がカギ−東大が解明

2007.02.15 日刊工業新聞 26頁 (全811字)

単層カーボンナノチューブ(CNT)内の微小な空間で室温でも筒状の氷ができる現象は、氷が五角形であることがカギを握ることを東京大学の丸山茂夫教授、塩見淳一郎博士研究員らが分子レベルのシミュレーションで突き止めた。ほかの形に比べ、五角形の氷は単層CNTの中で特別な安定性を持つためと考えられる。名古屋で開催中の「フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム」で14日報告した。 単層CNT内にできる筒状の氷は「アイスナノチューブ」と呼ばれ、産業技術総合研究所の片浦弘道自己組織エレクトロニクスグループ長、首都大学東京の真庭豊助教授らが04年、室温でつくることに成功した。当時の実験では氷が五角形の時、氷になる温度が室温だった。 筒状の氷の形と安定性の関係は当時から考えられていたが今回、単層CNT内に水や氷が入っている時の状態を分子レベルのシミュレーションで詳しく調べた。単層CNTに温度条件を設定し、CNTと水の熱振動も加味した。 シミュレーションでは当時の実験結果と同様、単層CNTの直径が小さくなるにつれ、筒状の氷の形も八角形から五角形へと変わり、水から氷になる温度は高くなった。 単層CNTの直径が約1・1ナノメートル(ナノは10億分の1)の時、中に筒状の五角形の氷ができる温度は約27度Cと計算。五角形から八角形までの氷については、当時の実験とシミュレーションの結果がほぼ一致した。 しかし当時の実験でつくらなかった四角形の氷は単層CNTの直径約0・9ナノメートルの時、約マイナス63度Cでできることが計算で分かった。氷になる温度は五角形の時が最も高いという結果になった。 この結果について、丸山教授は「四角形は氷として安定しにくい。六角形では自由に動き回る空間がある。五角形の氷は狭苦しい空間の中でピッタリとはまるし、はまった時の形が安定している。室温でも氷ができるのは五角形だけが特別、氷になりやすいからではないか」とみている。
日刊工業新聞社


単層CNTと,中にできた五角形のアイスナノチューブの断面(シミュレーション結果)