超撥水性の単層CNT膜、生体材料やMEMSに−東大

2006.06.19 日刊工業新聞 26頁 (全715字)

東京大学の丸山茂夫教授、村上陽一博士研究員らは高い撥水(はっすい)性を持つ垂直配向単層カーボンナノチューブ(CNT)膜を開発した。この膜の上に水滴を落とす実験では、水滴が元の球形をほぼとどめたまま膜の上に残るか転がり、高い撥水性を示した。生体材料や微小電気機械システム(MEMS)などで使う付加価値の高い膜として応用が期待できる。

開発した垂直配向単層CNT膜は、アルコールを原料にするアルコール触媒CVD(化学気相成長)法で石英基板上につくる。単層CNT1本の直径は2ナノメートル(ナノは10億分の1)前後。膜の厚さは約1マイクロ−30マイクロメートル(マイクロは100万分の1)で制御できる。5、6本の単層CNTの束を1単位とし、束同士の間には20ナノ−30ナノメートル程度のすき間がある。

多層CNTや単層CNTの垂直配向膜はこれまで、水を吸ってCNT同士が固まってしまうとの報告がある。撥水性の低い膜の上に水滴を落とすと、膜にしみ込んでなくなったり、水滴の球形が三日月(みかづき)状に変わったりする。

しかし今回、直径0・5ミリ−1ミリメートル程度の水滴を膜に落とし、顕微鏡で観察したところ、水滴はほぼ球形のままだった。「水がとにかくつかないので、最高レベルの撥水性」(丸山教授)としている。

丸山教授らは石英基板ごと湯に浸けるだけで、垂直配向単層CNT膜を基板からきれいに剥(は)がす技術を開発。剥がした膜はシリコンや透明なフィルムなど平らな基板に貼り直すことができる。この現象が起こる理由を調べる過程で、今回の撥水性を見いだした。

成果は長野市で18日開幕した「ナノチューブの科学と応用に関する国際会議(NT06)」で報告する。

日刊工業新聞社