東大、単層カーボンナノチューブを同じ向きに並べる技術開発

2004.07.29 日刊工業新聞 33頁 (全731字)


単層カーボンナノチューブ(CNT、筒状炭素分子)を1本ずつバラバラにし、向きをそろえて並べる技術を東京大学の丸山茂夫助教授、同大学院生の宮内雄平氏らのグループが開発した。単層CNTをゼラチンで固めた薄膜をつくるもので、コイルを巻き付けた円柱状の棒(ワイヤーバー)を使うため、単層CNTの向きを簡易にそろえられる。この薄膜に可視光をあてると狙い通りの波長の近赤外光を発した。通信、生体計測、センサーなどの分野で期待されているマイクロメートルサイズ以下の近赤外光用極薄・極小発光体などへの応用に道を開いた。
この技術により、1本ずつの単層CNTを初めて固体で保持できるようになる。強磁場やマイナス200度C以下の極低温など、いままで調べられなかった環境で、単層CNTのさまざまな物性測定が可能になる。
開発した技術では、アルコールを使う触媒化学気相成長(CVD)法で生成した単層CNTを、界面活性剤が入った水に入れ、超音波をあてて単層CNTを1本ずつバラバラにする。その後、この水を約50度Cに温め、常温で固まるゼラチンの粉末を溶かす。
次にゼラチンが溶けた液滴を石英ガラス基板にたらしてから、ワイヤーバーを1回、基板にこすりつける。液滴は瞬時に乾き、厚さ数マイクロ―数十マイクロメートルの薄膜としてこびりつく。単層CNTの向きはみな、こすった方向にそろっている。
この薄膜に可視光をあてて実験した結果、単層CNTが1本ずつ独立し、向きがそろっていることを確かめた。単層CNTの太さや筒の部分の巻かれ方により、光の吸収波長と発光波長の組み合わせを任意に変えられるとしている。
東京都内で開催中の「第27回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム」で29日、この成果を発表する。

日刊工業新聞社