東大、フラーレンから単層CNTを生成−極小の集積回路実現に道
2003.02.24 日刊工業新聞 1頁 (全645字)


東京大学大学院工学系研究科の丸山茂夫助教授と大学院生の宮内雄平氏らはフラーレン「C60」から単層カーボンナノチューブ(CNT)を生成することに成功した。金属触媒にC60を断続的に直接ぶつけ、化学反応でCNTを成長させる。直径分布のバラつきの小さい単層CNTができるのが特徴で、単層CNTの直径制御の実現に一歩近づいた。米テキサス州オースティン市で開かれる米国物理学会で3月3日に発表する。
CNTの直径と電気的性質には因果関係がある。直径を制御できると単層CNTを用いた極小集積回路の実現などさまざまな応用が期待される。
この手法は触媒CVD(化学気相成長)法の一種。金属触媒には直径数ナノメートルの鉄・コバルト合金を用いた。直径0・7ナノメートルのC60の粉末を600度C程度に加熱して気化させ、真空中の加熱炉に送り込む。ゼオライトの上に乗った金属触媒にC60を断続的にぶつけるが実験では5―10分で単層CNTの束ができた。
単層CNT生成のプロセスは(1)C60が金属触媒に取り込まれて化合物ができる(2)金属と炭素の原子数が約1対2になると飽和状態になり、化合物の外側にC60の一部が破損してくっつくようになる(3)これが単層CNTとして成長する―とシミュレーションしている。
従来の触媒CVD法では精度が良くても直径0・8ナノ―1・5ナノメートルの範囲でバラつくが、レーザー光を照射するラマン分光法で調べた結果、生成した単層CNTは直径0・7ナノ―1・1ナノメートルとバラつきが小さかった。
日刊工業新聞社