東大、単層CNT生成の巻かれ方制御に足がかり−蛍光分光法で確認
2003.10.07 日刊工業新聞 33頁 (全750字)


アルコールを原料にする「アルコール触媒CVD(化学気相成長)法」で平均直径0・9ナノメートル以下の単層カーボンナノチューブ(CNT)を生成した場合、筒の部分の巻かれ方が2、3種類に絞られてくることを東京大学の丸山茂夫助教授と大学院生の宮内雄平氏らが実験で解明した。筒の巻かれ方の制御は、小型で高集積な電界効果トランジスタ(FET)や大容量で高速な光通信用スイッチなどを単層CNTを用いて実現するのに不可欠の技術とされるが、今回の成果により、巻かれ方の制御の足がかりをつかんだといえそうだ。
単層CNTは1層のグラファイトが筒状に丸まった形状をしている。どの向きで丸まっているかによって金属になったり、半導体になったりと、電気的性質が変化する。このため、単層CNTの筒の巻かれ方の制御は研究レベルで現在、焦点の一つになっている。
今回、界面活性剤を加えた重水に生成した単層CNTを入れ、1本ずつに分離させてから「近赤外蛍光分光法」と呼ばれる手法で調べた。この手法はさまざまな波長の光を単層CNTに当てて、発光した光の波長分布を測定するもので、この手法を用いると二つの整数で表される巻かれ方ごとに、単層CNTの量が調べられる。
この手法で調べた結果、アルコール触媒CVD法で生成した平均直径1・0ナノメートル以上の単層CNTは巻かれ方の種類が多岐にわたっていた。しかし平均直径0・9ナノメートル以下に細くすると種類が激減し、2、3種類に絞られていた。
この実験結果の理由について、丸山助教授は「(単層CNTの)キャップの形の選択肢が少なくなってくるからだろう」と推測している。アルコール触媒CVD法以外で生成した単層CNTで同様の実験結果が出てくれば、巻かれ方の制御は直径の細さ次第という結論が導かれる可能性がある。
日刊工業新聞社