東大、単層CNT薄膜の偏光特性を発見、半導体転写用素子に応用へ

2005.05.16 化学工業日報 8頁 (全814字) 

 東京大学大学院工学系研究科の丸山茂夫教授らの研究グループは、垂直配向した単層カーボンナノチューブ(CNT)薄膜に可視光や紫外光に対して優れた偏光特性があることを発見した。とくに光波長二百八十ナノメートルの紫外光での顕著な特性を発揮するほか、入射光との角度を変えることで偏光特性をコントロールできる。この単層CNTは高純度で熱・化学的にも安定、高い熱伝導性を持つ。高エネルギー密度のエキシマレーザーを光源とする半導体リソグラフィーの偏光素子といった半導体プロセスなどへの応用を見込む。

 作製した単層CNT薄膜は厚さ二マイクロメートルで、五百度Cまでの耐熱性があり、化学的に安定で熱伝導率も高い。長軸方向に直線偏光した光を選択的に吸収、薄膜を傾けることで透過する光は一定方向の直線偏光となる。可視光、紫外光の広い波長領域で偏光特性を示す。とくに光波長二百八十ナノメートルでの特性に優れる。

 丸山教授らが開発したアルコールを炭素原料とするアルコール化学気相成長法(CVD)を使って作製した。八百度C、圧力十トールの雰囲気で石英基板上に高純度のCNTを成長させる。基板表面にコバルトとモリブデンの金属塩からなる二ナノメートルサイズの微粒子触媒層を形成しており、アルコールを反応させ、選択的に直径一ナノメートルの単層CNTを生成する。また高密度に生成するため、CNTは基板に対し垂直方向に成長する。厚さがオンライン吸光モニターで一−十マイクロメートル程度まで制御できる。

 これまでのエキシマレーザー(XeCl=光波長三百八ナノメートル、KrF=同二百四十八ナノメートルなど)による半導体リソグラフィーで使われている偏光素子と比べ、偏光特性は同等程度だが耐熱性、熱伝導率が高く、強い光や光の絞り込みができる。薄膜の角度によって偏光特性(光の透過率)が変わる性質がある。今後、実用化を視野に光学特性以外にも電気的特性などの解明にも取り組む。

化学工業日報社