東大、高純度単層CNTの低温生成手法を開発−安価で量産に道
2002.06.05 日刊工業新聞 5頁 (全616字) 


東京大学大学院工学系研究科の丸山茂夫助教授らの研究グループは、アルコールを使って高純度な単層カーボンナノチューブ(CNT)を低温生成する手法を開発した。触媒化学気相成長(CVD)法を用いて生成するが、条件が600―700度Cと従来よりも低温で済むのが特徴だ。これにより、単層CNTの大量生産に見通しがついたとしている。
物理化学の国際誌「ケミカル・フィジックス・レター(CPL)」に近く掲載される予定。
実験では、触媒をガラス管に置き、10トール の真空下でわずかにアルコールを流すと、触媒上に5―10分で数ミリグラムの単層CNTができた。エタノール、メタノール、プロパノールのいずれのアルコールでも生成できることを確かめた。
従来より低温な生成条件であるため、「シリコンなどのデバイスの上に(単層CNTを)生やすこともできる」(丸山助教授)という。
触媒の置かれたガラス管に炭化水素などのガスを流す触媒CVD法は、単層CNTを大量かつ安価に生成できる可能性があることから注目されている。
触媒CVD法ではこれまで、米国の研究者が高温高圧(1000度C以上、100気圧)下で一酸化炭素を使い、単層CNTを大量につくる技術を開発している。
しかしこの手法では、単層CNTに触媒がついて取れないことや、生成条件が安全、コストの両面で実用化のネックになるなどの課題があった。炭化水素の代わりにアルコールを使う今回の手法は、これらの課題をクリアしている。
日刊工業新聞社